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QUAHR株式会社

コロナ禍のベトナム人材ビジネス事情

1.ベトナムのコロナ事情

緊急事態宣言の解除により、コロナ禍は新たな局面を迎えた。
いずれ終息するにしても、コロナ以前に戻ることはもはやないだろう。
リモートワーク、オンライン上での手続きなど、その利便性や効率性には、定着するのに十分な価値がある。
また、多国間での人や物の往来が経済を活性化させてきたが、その流れが止まってしまった。
今後おとずれるであろう第二波、第三波に備えながら、新たな枠組みを作り、繋がりを持続可能なものにする必要がある。
実習生制度も中断を余儀なくされている。貴重な働き手であるとともに、同じアジアの発展を担う人材である彼らが来日するためには、双方の国の状況の改善と、出入国時の確実な検査体制の整備が必須だ。
新型コロナウイルスにより世界中が打撃を受けているが、その度合いや収束に向かう在り方は国によって大きく異なる。
東南アジアで「コロナ封じ」に成功した国のひとつが、外国人技能実習生最大の送り出し国であるベトナムだ。
人口約9621万人に対して、コロナ感染者数は、僅か331人にとどまり、死亡者数は、ゼロである。このコラムを書いている7月5日時点で、80日間連続で市中感染が確認されておらず、国内感染者のほとんどが回復し、現在わずか15名が治療を受けているのみとなっている。
この完全なる抑え込みは、初期段階からの感染者隔離や、濃厚接触者の追跡を徹底したことが功を奏したものといわれている。


2.ベトナムのコロナ封じ

ベトナムにおけるコロナ情勢は、1月23日に、中国・武漢からの入国者で初の陽性患者を確認。その一週間後には中国との往来制限を宣言し、航空各社がフライト停止を発表した。
2月に入ると「流行宣言」が発令され、各種教育機関に休校を要請し、技能実習送出機関が運営する日本語学校の多くも、休校状態となった。
この時点での感染者数は、まだ10人未満である。その後、ベトナム保健省がコロナ対策アプリや特設ウェブサイトを開設し、コロナに関する情報開示が展開された。そこでは、感染者がすべてリスト化され、年齢・性別・住所・病状まで公開し、注意喚起を促した。
つづいて3月に、国内感染者数が50名を超えると、水際対策として、外国人に対するビザ(査証)の発給停止を決定し、すべての外国人の入国をブロックするという徹底ぶりをみせた。
日本ではそれから少し遅れた4月3日、入国拒否対象地域にベトナムが追加された。
以来、両国の往来がストップされたまま、2ヵ月以上が経過した。新年度に出国を予定していた多くの実習生が、ベトナムにとどまらざるを得ない状況が続いており、現在もいつ日本に入国できるか目途が立っていない。
その経済的インパクトは大きく、ベトナム送出機関に、様々な変化が起きているという。


3.ベトナム送出機関の今

ハノイ、ホーチミンなどの都市部は、スポーツイベントやカラオケ店などの営業も再開され、街は元の活気を取り戻しているそうだ。ここまでに至るベトナムのコロナ初動期からの対応は、国際的にみても、称賛に値するといっていいだろう。
一方、徹底した隔離政策、国境封鎖政策の代償として、今、ベトナム経済に、甚大な影響が出ているといわれている。
特に国をまたぐ往来がなくなったことにより、観光関連産業など、海外からの観光客に依存していた地域や業種は、未だ再生の目途が立っていない。
そして、外国人技能実習事業を生業としている送出機関にも大きなインパクトを与えている。
3月下旬に日本への実習生渡航が完全に停止されてから、3ヵ月以上が経ち、中堅規模以上の送出機関においては、各社数百人単位の実習生が、国内に留まらざるを得ない状況が続いている。
送出機関は、出国直前に、実習生から徴収する教育費・手数料が主な収益源である。そのため、予定していた売上げがゼロのまま4ヵ月目に突入し、事業継続が困難な送出機関が出てきているということだ。
営業マンの減給や一時帰休にはじまり、今では、リクルーターや間接部門の人員を含めて、大規模なリストラが進んでいる。
ここ数年、拡大しつづけてきた300社以上のベトナム送出機関において、青天の霹靂であったコロナ禍は、事業を大きく失速させ、多くの失業者を出している。
それは、日本人スタッフにも及んでいる。筆者が懇意にしているひとりの日本語教師は、6月に突然の解雇を言い渡された。
経営者から急に呼び出されて、「明日でセンターを閉鎖することになった。今日で解雇します」という具合だったそうだ。職を失ったうえに、5月の給与も未払いのままだという。
同氏によれば、一時期、開設ラッシュに沸いたハノイ北東部のバクニン市周辺では、日本語学校や訓練センターの縮小や閉鎖が進んでいるそうだ。


4.そしてベトナム実習生は

送出機関だけではなく、実習生たちの負担も大きい。
予定を大幅に超えて宿舎に留まり、先が見えない中で、日本語学習をつづける日々に不安が高まっているようだ。
特に、3月、4月出国を予定していた実習生たちは、2月「流行宣言」の学校閉鎖時に、一時的に故郷へ戻され、その後もオンライン授業など、通常とは異なる環境での学習を強いられた。それにも関らず、未だ在留許可が下りない状況だ。
なかには、もう日本へ行くことが出来ないのではないか、と疑念を抱いたり、日本行きを諦めて、国内で他の職に就いたりする実習生も散見されているという。

ただ、オンラインを通じて対話する多くの実習生たちは、気持ちが折れることなく日々、日本語学習に打ち込み、今も日本行きを待ち望んでいる。
彼らを画面越しに励ますことしか出来ないことを歯がゆく感じつつ、一日も早く、再び両国の往来が正常化することを切に願っている。

(※このコラムは、ビル新聞2020年6月22日/7月27日号掲載「リアルタイム外国人技能実習24時」Vol.18/19を加筆転載したものです。)


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